藤原直哉の「日本と世界にひとこと」小泉政権の後始末

このページは藤原直哉のインターネット放送局(2006-9-26)のテープ起こしです。

皆さんこんにちは。経済アナリストの藤原直哉です。この時間は「日本と世界にひと言」と題して、今の世相を見て、あれっと思うことを本音でお話ししていきたいと思います。

改めまして、こんにちは。9月26日「藤原直哉の日本と世界にひと言」。きょうの話題は「小泉政権の後始末」です。安倍政権というものが発足しましたが、だれがどう見ましても、せいぜい寿命は半年というということで、この半年間は小泉政権の後始末ということが一番忙しくなりそうです。

基本的に、小泉政権が始まる前の時代までに東大の経済学部の連中が言っていた伝統的な経済学の処方箋は全部破綻し、小泉内閣では竹中に象徴されますように、革新的なといいますか、進歩的なというんでしょうか、ラディカルなというんでしょうか、右翼的なというんでしょうか、なんかその規制改革とかですね、あるいは民営化なんかを中心とした経済学の教科書をその通りやってみて、結局これも破綻したわけでありますね。ですから今回竹中が引くだけではなくて、奥田氏とか宮内氏とか牛尾氏まで、古い人ですけども、引くみたいでありまして、今まで経済を動かしてきた柱になった人たちがいなくなるわけですね。東大と慶應大学、両方が失敗して退くわけですから、もはや経済は何もすることがないわけですね。

本当に完全に舵を失った感じでありますが、いずれにしましても過去10年間の時代のものすごく大きな負の遺産の整理をこれから急ピッチで進めなければならないわけであります。その一部はなんかもう週刊誌なんかに出ておりますけれども、いよいよこれから大きなスキャンダル暴きみたいなものが本格化するんだろうと思うんです。でまあ、わたしの聞いている話によりますと郵貯のお金の内、200兆円はもうすでにアメリカの国債、30(40*)年満期の国債の購入に充当されたと。で、これがようするに郵政民営化の目的だったんだと。もうすでにゴールドマンサックスの手で充当はされていると。その手数料として3兆円の金がアメリカからアメリカ国債の形で渡されたと。それを小泉1兆、竹中2兆で分けたと。

で、ところがそれに関して内容を知っている人が検察にリークしたと、刺したと。その結果、検察が4月に竹中を事情聴取してすったもんだになったんですが、前から申しておりますように、日本の検察庁というのは月に一回今でもCIAと勉強会をやっているようですから、ま、その席でですね、CIAから厳重にですね、これは表に出しちゃいかんと言われたらしいんですね。

この過程っていうのはリクルート事件と同じですね。リクルートはなんで中曽根が逮捕されなかったかというと、中曽根を逮捕しちゃうとその片割れでありますアメリカのほうの高官をですね、共同正犯で捕まえなければならなくなるんで、だから中曽根は逮捕できなくなって、それで藤波さんのところへ代理逮捕みたいな形で話がいったわけですよね。ま、そういうこともありまして同じような形になったわけですが、なんか現場の検察官も最近は10億円ぐらい渡されると黙っちゃうんだという話も聞いておりましてですね。ま、なるほどなと。検察官僚の汚職の話は、腐敗の話はよく聞くんですけれども、なるほど10億円ぐらいもらうと黙るのかと、そんなふうにも感じるんですが。

まあ、それはともかくですね、アメリカから待ったがあったんで、竹中逮捕もできそうにないと。で、妥協したあげくはどうなったかというと、竹中は大臣を辞めて、スタンフォードだと聞きました、スタンフォード大の客員教授になって、二度ともう日本に帰ってこない。ですから終生、遠島(えんとう)を申し付けると、こんな感じですね。そんなふうになったらしいんですが、まあしかしこんな話も本当にどこまで隠しきれるのかどうかですね。

それから竹中の下にいた連中は芋づる式に出てくるんだろうと思うんです。なにせこの10年間というのは、裏側に回った連中の腐敗は目を覆うべきものがあったんです。国民のまったく知らないところ、あるいは国民をだましにだましてですね、財産を全部横取りしていったんですね。これは戦前の軍部の資産の横流しなんかとよく似た構造じゃないかと思うんですが、国民に対して秘密にすればするほど横流しはできるようになるんですね。ですから140兆円に上ります国有財産の売却も、売却先が全部決まっちゃってるという話ですし、まあなんかそのでたらめ振りがこれから全部表に出てくるんだろうと思うんですね。

ハンガリーの首相が先般、「実はわたしは国民に大嘘をついてきました」と、「選挙で勝つために経済のことについて大嘘をついてきました」ということを懺悔(ざんげ)いたしました。ところが首相を辞めないというので大騒ぎになってですね、いまハンガリーは大変な反政府運動で()めちゃってるんですけれども、ま、同じようなことが日本でも起きたわけですね。世界中どの国を見ましても、民営化とか規制改革とかやりますと、必ず一部の腐った連中が財産を横取りして、権力を横取りしてやりたい放題やるんですね。実は日本でもまったく同じだったということがこれから国民の目に赤裸々に現れてくるんじゃないかなと思うんです。

なんか安倍内閣も後ろに飯島氏が控えてるという話だったんですが、飯島氏も辞めるようですね。ですから、よもやの展開になってくるんじゃないんでしょうか。で、安倍政権を延命させるためのやり方として、郵政民営化で造反した人たちを元に戻そうという話があるんですが、その中心は亀井氏、綿貫氏、野呂田氏なんですね。この3人を自民党に戻してくれば自民党も息が吹き返るんじゃないかという話があるんですが、さて本当に戻るかどうかですね。

で、そうなってきますと、実はいま小泉氏も院政をしいておりまして、人事権をまだ持っているようなんですね。何せ1兆円の金をもらったわけですから、楽々悠々なもんですよね。で、人事権を持ってやってるんですが、この3人を復活させようということになると、小泉人事をひっくり返さなきゃなんないんで、小泉を黙らせなきゃなんないわけですよね。ま、その実力が安倍氏にあるのかどうか、そのへんは見極めどころじゃないかなと思うんです。

それからやはり後始末の中で、一つは外交ですね。もう今や、アメリカからもおかしいと言われている始末で、ワシントンポストにも、日本の新しいリーダーは歴史を正直に見なけりゃいかんと、そんな記事も書かれておりますし、それからフィナンシャル・タイムズだったですかね。ノビス級のリーダーだと書いてあって、ノビスってアメリカのアマチュア無線で一番下の位の資格なんですよね。一番手軽に、子どもみたいな人が取れる免許がノビスというやつで、なんかそんなふうに言われてますね。

で、それから東アジア全体はものすごく警戒しています。韓国も中国も安倍にはたいへん警戒していて、安倍と仲良くやったりしますと自分の国内で言われるわけですよね。お前んところは自分の国を侵略した国の、しかもそれを自慢している国の元首、リーダーと仲良くやるのかということで、自分の国の中で追われる立場に置かれますから、東アジア各国は相当警戒していて、しかし安倍のもとでは外交の問題の後始末ができませんので、これはその次、小沢氏になるかならないか分かりませんが、安倍がこけたあとの仕事ということになるんでしょうね。

それからもう一つは、過去10年余りのたいへんな強硬政治のつけとして、企業が破綻してしまった、自治体が破綻してしまったことのこの後始末ですね。ま、自治体の破綻に関しましては、栗東(りっとう)市が市債を裁判所から差し止められたりしておりましたけれども、本当にいよいよ財政難、金利も上がってきましたのでこれでもうおしまいですね。この安倍内閣は消費税率も限りなく上げないことを言っておりますから、財務省ももうお手上げですよね、こうなりますと。まあ、そんなことで財政はもう本当にこのままどうしようもない。

あと気になりますのが大手の企業ですね。週刊誌にも出ておりますが、いろいろ倒産話もあちこち出ているんです。たぶん順番に来るんだと思うんですね。やはりこの10年間という時間の間に、内部が本当に壊れちゃった会社が結構あります。役所なんか典型ですが、銀行とか証券とか大手のメーカーなんかで、本当にこの10年前と今と比べたとき、中身が全部出ちゃったと、抜け殻になっちゃったというような会社ってすごく多いんじゃないんでしょうか。やはり飲んだ薬が間違ってたんですね。飲んだ薬がとんでもない下剤で全部出ちゃったんですよ。ま、慶應の学者もすごい薬を飲ましたもんだと思いますよ。その手数料として2兆円ももらったんですからね、竹中は。大したもんだと思いますよ。

ま、でもそんなところも抜け殻になっちゃったんで、何とかしなけりゃならないったって、何ともならないわけですから。こういうのはいったん壊して作り直していくことになるんだろうと思います。で、こんなでっかい会社がつぶれるはずがないなんて言いますけれども、恐竜が絶滅したのと同じことでありまして、でかい物だって、逆にでかいからこそ、なかなか変化には対応できないですね。むしろゴキブリみたいなもののほうが長く続いているわけですよね。

ま、そんな感じでありまして、小泉内閣の後始末というのは、やがて巨大な組織の破綻、崩壊というところにやはり行くと思うんですね。当然その責任論も出てきますが、そのあとどう再建するかというところが非常に重要な問題になってきますんで、その後始末も、とりあえずみんなが怒って、あぜんとして怒ってと。そのあとになりますから、半年や1年ぐらいはすぐ時間がたっちゃうんですね。ちょっとじれったいようなところもありますけども、一つの、ある種の儀式みたいなことをやらないと済まないんで、それはそうなるでしょう。

それからもう一つ、小泉政権の後始末ということで言ったら思想信条の問題ですね。日本では靖国問題とか国歌・国旗の話がよく言われますが、例えば、中国なんかでは江沢民の時代から愛国心教育なんかものすごいし、アメリカへ行きますと、進化論を学校で教えていいかどうかという話も大騒ぎだし、イスラムはイスラムで、御承知の通りの状況ですし、いまや精神世界の話について国家がえらい介入してきて、指導者の思ったとおり考えないと牢屋にぶち込むぞというような時なんですね。日本もその中の一つにあるんですが、このたび、東京都の学校の先生たちが起こしておりました裁判で、国歌・国旗を学校に強要することは違憲であるという判決が出たわけですね。こんなのも、ひとつ流れが変わる象徴でありまして、なんて言いますかね、引き締め疲れが起きちゃってるんですね。各国それぞれに引き締め疲れが起きてまして、思想信条で引き締めるのはもはや限界じゃないでしょうかね。

企業なんか見ててもそうですよね。もう、なんかひとが勝手に休んでもみんなあまり気にもしなくなっちゃっておりますし、無断欠勤なんかも当たり前になりつつありまして、企業理念などと言っちゃってですね、完全にお題目になっちゃっている組織も結構多いですよね。ですから気持ちの引き締めのいよいよ後始末ですね。こういうのって完全にアノミー状態っていいまして、もう訳わかんなくなっちゃうんですよね。完全なる思想の混沌になっちゃうんで、それも一時期そういう時期があってそれから次へと収斂(しゅうれん)していきますから、この10年間の小泉政権、その前から始まっております、一つの時代の大整理、いろんなところに広がりそうです。小泉政権の後始末、かなり大きな変化を日本にもたらすと思いますので、世の中の動きには十分注意しなければいけないなと、そんなふうに思っております。

というところで、きょうの「藤原直哉の日本と世界にひと言-小泉政権の後始末」ということで、お伝えしました。

*9月30日、話者による訂正(ブログコメント欄で)
藤原直哉 (プロフィール) 著作&翻訳本

このページは「野バラ」が作成しました。掲載にあたっては、藤原さんの許可をいただいています(2006/10/01)。